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関西国際空港は、大水深かつ軟弱な地盤の上に建設されるため、当初から、地盤の沈下対策が大きな技術上の課題であると考え、その解決に努めています。
海底のすぐ下に堆積している軟弱な沖積層に対しては、空港島全域で地盤改良を施し、予め人工的に地盤の沈下を促進することで、工事中に沈下を完全に終了させることとしました。
その下の洪積層に対しては、人工的な地盤改良を行うことが、技術的にも、経済的にも困難です。このため、洪積層の沈下をできるだけ建設中に進行させ、空港の供用後に生じる沈下に対しては、建物の柱にジャッキアップ装置を予め組み込み、建物を水平に保つように調整するといった工夫をこらします。その他の施設についても、丁寧な維持管理を行っていくことで、機能を維持していこうと考えています。
また、埋立地自身が圧縮沈下することがないよう、埋立地盤の表層も地盤改良を行って締め固めることとしています。
こうした計画・設計面での対応に加え、現在工事が進められている埋立工事の施工面においては、全地球測位システム(GPS)や、面的な深浅測量システムなどの最新の測量システムと、コンピューターデータベースを連動させた埋立施工管理システムを用いることによって、場所によって沈下が異なること(不同沈下といいます)のないよう、埋立地の厚さをできるだけ均一に仕上げるような管理を慎重に行っています。
このように、2期の計画、設計、施工から維持管理にわたる各段階で沈下を考慮することで、トータルとして、将来にわたって空港機能に問題が生じないように対応していくことができるものと考えています。
こうした対応のベースとなる2期島の沈下予測については、1期島の10余年にわたる沈下の観測結果をフルに活用し、また、400mに達する深いボーリング調査や最先端の土質試験方法による成果などを分析するとともに、それらの結果について学識経験者の方々に評価していただいたうえで、工事開始からほぼ沈下が終わるまでの間(開港後50年頃)の海底地盤の平均的な沈下量を18m程度と予測しています。
この予測は、現時点での技術の粋を集めた予測であると考えています。
しかし、沈下は長期間にわたる現象であるため、2期島における沈下観測を十分な態勢で行うとともに、その結果を埋立工事や維持管理に反映させていくこととしています。
ここでは、少し専門的になるかもしれませんが、既に工事が始まっている2期島の沈下予測法をご紹介して参ります。
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| ▶重要な洪積層の沈下予測 |
空港島のある海底地盤は、軟弱な沖積層とその下の洪積層(洪積層は粘土層と 砂層が幾層にも積み重なっています。)と呼ばれる地盤で形成されています。 |
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・沖積層
表層の柔らかい沖積粘土層については、1期島と同じように、2期島でも全域でサンドドレーン工法によって地盤改良を行っています。この粘土層は、昔から地盤改良がなされ、その性質についての知識や経験が豊富ですから、 予測も比較的容易です。また、この粘土層の沈下は、地盤改良の効果によって工事中に終わってしまい、 開港後に続く長期的な沈下には関係ありません。
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・洪積層
開港後も続く長期的な沈下は、洪積層中の粘土層(以下、洪積粘土層という)で起きる沈下です。 洪積粘土層はあまりにも深く厚いため、沖積粘土層のような地盤改良ができないので、自然のままの状態の洪積粘土層が何十年もかけてゆっくりと沈下します。開港後にも沈下が生じるため、空港機能を確保していく上で、洪積粘土層の沈下の予測は特に重要です。
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| ▶洪積層の沈下予測の3つのキーポイント |
洪積層は、砂と粘土が幾層にも積み重なっており、堆積した年代や粘土の硬さ等の性質の違いから 上部と下部に分類できます。
上部洪積層は、厚さが200m程度で、10層の砂層と、これに挟まれた9層の粘土層で構成されています。これらの粘土層は、 たくさんの水を含んでいます。粘土層に含まれる水が、2期島の荷重によって粘土層の上下の砂層に押し出されることにより、 沈下は生じます。その水は、粘土層の上下の砂層を通って、島の周囲に抜けていきます。沈下の速さは、 砂層を通る水がどれだけ速く島の周囲に抜け出るか(砂層の排水性)によって大きく変わります。 また、砂層が途中でなくなっている場合には、その砂層は水の 通り道にならず、その上下の粘土の沈下は非常に遅くなります。
→上部洪積層の沈下のイメージ図
下部洪積層は、厚さが300m程度ですが、上部洪積層よりも堆積した時代が更に古く、2期島の荷重に耐えるだけの硬さがあるため、大きな沈下が生じることはないと考えられます。しかし、1期島での下部洪積層の沈下計測データによると、データの精度は上部洪積層の計測データよりも劣るものの、下部洪積層の上層部分では、ある程度の沈下が生じている可能性があります。
このような洪積層の沈下を予測するには、 |
1)上部洪積粘土の圧縮性を正確につかむこと
2)上部洪積層中の砂層の排水性をつかむこと
3)下部洪積層の沈下を適切に評価すること |
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| ▶洪積粘土の圧縮性の把握 |
・大深度ボーリング
3つのキーポイントに関する洪積層の性質をしっかりと把握するためには、ボーリング調査により地層の構成等を調査するとともに、粘土のサンプルを自然のままの状態で地中から採りだし、試験室で室内試験を行うことが必要です。
1期島の建設に先だって、昭和52年から57年にかけて65本にも及ぶボーリング調査が運輸省によって行われ、その内2本は400m、その他も100~200m級の大深度まで調査が行われました*。さらに、2期島の建設に先だつ平成6、7年には、4本の400m級ボーリングを行い、下部洪積層の上層部分までの地盤の性質の把握に努めました。
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| * ボーリングの調査深度は普通は100m以下で、400mを越えるボーリングは、大阪湾でも数例しかありません。 海底深くにある粘土を自然のままの状態で地中から採り出すには、長年の経験と慎重な作業が要求されます。 |
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・最先端の室内試験
ボーリングによって採り出した粘土のサンプルを使った室内試験法としては、1期の建設に先立つ調査では、沖積粘土などの柔らかい粘土に対しての適用性が高く、一般的な試験法である標準圧密試験法等によって粘土の圧縮性を把握していました。その後、試験法が改良・開発され、2期の調査においては、定ひずみ圧密試験法等も活用することによって、洪積粘土の圧縮性が、さらに精度良く評価できるようになりました。→圧密試験方法の比較 |
・データベースの活用
2期の検討においては、ITの進歩を受け、ボーリング調査結果や室内試験結果を全てコンピューターにデータベース化し、データ処理技術を駆使した整理解析を行いました。この結果、 * 同じ1層中の粘土層を更に細分し、深さの違いによる粘土の性質の微妙な違いをより細かく計算にとりいれる
* 同じ1層中の粘土層でも、沖合い方向だけでなく岸沿い方向の、粘土の厚さと粘土の性質の微妙な違いをより細かく計算にとりいれる などを行うことにより、1期よりもさらに精緻な予測が可能となりました。
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| ▶砂層の排水性 |
砂層の排水性は、砂自体の水の通し易さ(透水係数)、砂層の厚さ、砂層の平面的な広がりや連続性など、いろいろな要素が関係しているので、ボーリング調査だけで推定することは困難です。
1期の建設に先立つ調査段階では、砂層の排水性、粘土の圧縮性や空港島の荷重などが不確実であったため、それぞれに対していくつかの条件を想定し、それらを組み合わせて合計26通りの計算を行いました。その結果、開港10年後の総沈下量として約6~10mという幅のある 計算値がえられました。この中から比較的信頼性の高いと思われる条件を選定し、計算を行った結果、 開港50年後の総沈下量として8mという値が得られ、これをもとに1期事業をスタートさせました。しかし、事前の調査だけでは経験のない洪積粘土層の沈下量を精度よく予測することが困難でした。 このため、本格的に埋立工事を行う前に、先行埋立調査工区を設け、その沈下状況をみて予測精度を上げ、本格的な埋立工事に反映させることとしました。
平成元年になって、先行調査工区の約6ヶ月間の沈下観測データが得られました。 標準圧密試験結果に粘土のサンプルを地中深くから採った時の粘土の乱れも考慮して粘土の圧縮性を設定し、かつ、上部洪積層の10層の砂層すべての排水性が高いものと仮定した場合の計算値が、このときの沈下観測データとよく合うことから、この計算条件で本格的な埋立工事以降の予測を行いました。
2期の予測においては、1期島等で埋立完了後も観測されてきた砂層内の水圧の状況も考慮に入れて、砂層の排水性をモデル化しています。モデル化においては、砂層の厚さや平面的な広がりについて、ボーリング調査結果などのデータを、最新の地質学の研究成果を取り入れて設定しています。
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| ▶下部洪積層の沈下の考え方 |
1期島での観測によると、下部洪積層においても、ある程度の沈下が生じている可能性があります。 しかし、下部洪積層のどの層が、どのようなメカニズムで沈下しているのかというデータは、ほとんど得られていません。
下部洪積層は、上部洪積層と同様に水が抜けて粘土が圧縮するというメカニズム(1次圧密)で沈下する場合と、それ以外のより複雑なメカニズム(2次圧密)で沈下する場合が考えられます。2次圧密と考える方が、長期にわたって沈下が続くことになるので、2期の沈下予測においては、2次圧密として計算を行っています。
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| ▶2期の沈下予測法の妥当性 |
このような計算方法や計算条件の設定にあたっては、平成3年度以来、学識経験者で構成する委員会での綿密な指導のもと、新しい予測法で1期島の洪積層の沈下量を計算し、実測値と比較することにより予測法の妥当性を確認したうえで、2期島の沈下の予測を行っています。したがって、この予測法はより信頼できる方法であると考えています。
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| ▶2期の沈下予測に対する情報化施工 |
2期の沈下予測法は、1期に比べると、比較にならないほどの豊富なデータや知見を踏まえたものであり、現時点での技術の粋を集めたものであると考えています。
しかしながら、2期島の造成にあたっても、更に沈下予測の精度を上げかつ埋立地の高さを適切に設定するために、本格的な埋立に先立ち、洪積層の沈下傾向を観測する計測櫓を新たに2基設置し、島内には面点に把握できるよう沈下計を設置して計測するなど、念入りな観測体制で臨もうとしています。 今後、検討委員会の指導を得ながら、これらの観測データや最先端の室内試験結果をふまえて沈下予測の妥当性を検証し、埋立工事に反映させていく情報化施工*を行っていくこととしています。
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* 情報化施工とは、「施工中の技術管理データを分析しながら施工のみならず設計までも最適化を図ろうとするもの」(土木工学ハンドブック、土木学会編)と定義されており、埋立工事、盛土工事、トンネル工事など、地盤を扱う分野で一般的に採用されています。
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| ▶2期島の概成と沈下状況 |
2期空港島は2007年の供用開始後も着実に工事を進め、2009年3月に北側連絡誘導路用地の造成、2期ターミナル用地の造成、泉州港との取り合い部の造成及び護岸の嵩上げ工事を残し概成しました。
今後は、残る工事を実施しつつ、未利用地については将来の施設整備に備え、造成表面には排水勾配を設け雨水管への排水を促すなど強固に締固めた地盤に雨水が長期にわたって溜まらないように維持管理を行っていきます。
また2期島の概成によって埋立による海底地盤にかかる荷重は、面的にほぼ最終に近い状態(55~60tf/m2)になりました。今後2期島全体の沈下状況を面的に観測・整理し、専門分野の学識経験者で構成する委員会の指導を受けつつ地盤挙動の把握に務めていきます。 |