本日は、「国際空港シンポジウム2001」の基調講演ということで、「21世紀におけるグローバルな人・物の動きと国際空港」というテーマについてお話ししたいと思います。
[1.21世紀国際経済・社会の新しいパラダイム]
 20世紀末の世界の政治・経済・社会の動きを振り返ってみると、大きな構造変化が起こっているという認識を持たざるを得ません。ソ連邦の崩壊、東西冷戦の終結、東西ドイツの統合、ボスニア・ヘルツェゴヴィナの民族紛争、コソボ紛争、そしてEUの統合など、20世紀のこれまでの尺度では全く予測不可能な事象が次々と生起した。20世紀を支えた国際社会の秩序が崩壊し、混沌としたカオスの状態となり、その中で新しい21世紀の秩序が模索されています。
 それでは、21世紀はどのような時代になるのでしょうか。また、21世紀の新しい社会秩序はどのように構築されるのでしょうか。アメリカのサイエンス・ジャーナリスト、M.Mitchell Waldropは、ノーベル賞受賞学者が数多く参加しているサンタフェ研究所での取材をとおして、“COMPLEXITY The Emerging Science of the Edge of Order and Chaos”という著書をあらわし、混沌としたカオスの状態から21世紀は複雑系の社会へ推移すると述べています。そして、新しい複雑系の社会システムを構築していくためには、
(1) 画一化から多様化へ
(2) 機械論的システム化から自己組織化へ
(3) 中央指令型から分散協調型へ
と社会システム構築のパラダイムを転換していくことが重要であるとしています。
 現在、EU、NAFTAやASEAN等の経済統合の進展に代表されるように、世界経済の統合化が急速に進みつつある。情報・通信技術や航空ネットワークの発展は世界経済のネットワーク化を進展させ、都市・地域経済が世界経済の動きに連動するようになってきました。このような世界経済の統合化と、地球規模における世界都市のネットワーク化は、これまでの人類の歴史になかった新しい現象です。それが都市・地域にどのような影響を及ぼすかを予測することはきわめて難しい。
事実、わずか20年前には予測もしなかった新しい現象が国際社会に同時に起こりつつあります。EUの統合による経済的国境の消滅は、世界経済に予測もし得ない新しい変化をもたらす可能性がある。東欧諸国は世界資本市場に国を開き、それまでのCOMECOM体制に代わる西側諸国と結びついた新しいヨーロッパの経済統合を模索しています。北米大陸では、アメリカ合衆国・カナダ・メキシコがNAFTAに調印し、これまで以上に緊密な関係を保つような経済統合を果たしつつあります。さらにASEAN諸国が独自の経済統合の途を求めて模索している。
 世界経済の統合化は、国際的な財・サービス・資本市場の形成と知識・情報の国際的なネットワーク化をもたらします。資本や知識の蓄積量は、もはや国民経済の内部だけでは決定され得ず、世界規模で展開する資本・知識の蓄積過程の相互作用の中で決定されるようになってきています。
資本・知識の蓄積量は、各国の総生産、国際収支、賃金率や利子率等の短期的な経済変数を決定します。また、情報・通信システム、国際航空ネットワーク、国際的学術研究機関といったインフラストラクチュアの整備は、世界経済のネットワーク化を通じて、結果的に各国の経済発展や貿易構造に多大の影響を及ぼすこととなる。

 一方、19世紀から20世紀にかけて、ロンドン、パリ、ニューヨーク、東京などの諸都市は、周辺都市の諸機能を吸収して巨大化し、世界都市としての地歩を築いてきました。
 これらの都市は、S.Sassenの言う「世界経済システムの司令部として、また、世界の金融とサービスの中心」としての世界都市でありました。しかし、21世紀の新しい世界経済のネットワーク化時代の各都市は、それぞれの都市のアイディンティティを主張しながらも、相互にネットワーキングすることにより、有機的に結び付きながら互いに競争し、協調することにより、シナージェ効果によって発展する時代となってきています。
 スウェーデンの地域経済学者 ke E.Anderssonは、21世紀の地球社会のなかで重要な役割を果たすことのできる都市を目指すためには、「Post Industrial C-Society」の形成が極めて重要であると指摘しています。
C-社会のキーワードは創造性(Creativity)、文化(Culture)そして交流(Communication)である。すなわち都市が豊かな創造性を持つこと、また創造性をかきたてる都市固有の文化に市民が誇りを持ち、新しい文化を生み出していくこと、創造性を生み出すための国際的、学際的そして業際的な知識と知識の交流の場の整備が必要であるとしています。20世紀型の世界都市とは一味も二味も違ったR.V.Knightの言う「知識資源に基礎を置く創造性の中心」としての世界都市づくりを目指すことが、これからの課題となってきています。
 それでは、次に、創造性を重視した21世紀型の世界都市づくりにとって重要な「交流」について、もう少し掘り下げて考えてみることとしましょう。
[2.21世紀は大交流時代]
 人々がそれぞれの国土の中で生きていくうえで、人や物や金や情報や文化の交流は欠かすことができない。これらの交流は、国土や地球の上にはりめぐらされた交通ネットワーク、情報通信ネットワークをはじめとするハード・ソフトのインフラストラクチュア、すなわち、ロジスティック・システムによって支えられています。ke E.Anderssonは、過去数百年にわたって出現した都市・地域経済の劇的な変化や進化が、これらロジスティック・システムの構造変化によってもたらされたことを明らかにしています。
(1)13〜14世紀にかけて、ヨーロッパの交通の発達により、輸送費用の減少と遠隔地交易が発展し、ベニス、ジェノバ、フィレンツェなど北イタリア・フランダール地方に都市が出現した。
(2)17世紀の初めに、貨幣交換システムの構造変化により銀行が生まれた。アムステルダム、ロンドン、パリで商業貿易が隆盛を極めた。
(3)18世紀に起こった産業革命により、加工技術が進歩し、エネルギー変換技術が開発された。これによって交通が発達した。それによって地域経済が発展し、世界の主要都市が形成された。
(4)現在は、IT革命が進展し、通信システムやコンピュータシステムは著しい進歩をみせている。インターネットの発展により、すべての企業や家庭は、世界中の情報に瞬時にアクセスすることが可能となってきた。さらに教育システムが発達して、都市の人びとの知識を豊かにしている。また、地球を覆う航空ネットワークの充実によって、世界的な規模での効率的な交通流動が行えるようになってきた。
 このような状況を反映して、ボーダーレス化が進み、世界の都市同士が互いに交流し連携することによって発展を続けるようになってきています。
まさに、現代は、ke E.Anderssonの言う第4次のロジスティック革命の時代である。世界の都市間の人・もの・金・情報・文化の流動が急速に増大してきているわけで、このような状況は、今後ますます進展するものと考えられています。
 一方、21世紀の新しい時代を迎えて、経済学のプロダクトサイクル論の教えるところに従い、先進諸国の産業は近隣の発展途上国と役割を分担しつつ、より効率的な生産活動を目指して海外展開を進めています。このため、国境を越えた生産活動の分担により、半製品や製品の動きが盛んになってきています。21世紀には、人、もの、情報の交流が国、地域、個人の間で重層的に行われ、そこでは、個々のアイディンティティを尊重しながらも公正に競争し、協調することによって、新たなものが生み出されてくるわけです。世界が中世から近世に転換する契機となった「大航海時代」と対照させて、われわれは「大交流時代」と呼べる21世紀の新たな時代を迎えつつあると言うことができるでしょう。このように、世界各国の都市の間で相互依存が一層深まり、人、もの、金、情報、文化の流動が飛躍的に増大するなかで、大交流時代を支える世界に開かれた活力ある国際空港づくりを進めていくことが極めて重要となってきています。
 それでは、次に国際空港整備の必要性を航空旅客の需要動向から検証してみることとしましょう。
[3.21世紀における航空輸送の明るい展望]
 このような大交流時代を迎えて、21世紀の航空はどのような姿になっていくのでしょうか。
 1995年9月30日、同10月6日の“The Economist”紙によると、コミュニケーションのコストのなかから距離と時間の要因がなくなりつつあるとあります。将来は一定の会費を払うだけで、世界中のだれとでも自由に何時間でも話せるようになるだろう、と。また、電話、テレビ、コンピュータの境界がなくなりつつあるため、新しい種類のコミュニケーションサービスが提供されるようになる。そうなれば、21世紀には20世紀には考えられもしなかった本格的な高度情報化社会が到来するであろうと述べています。
 問題は情報革命の航空輸送に及ぼす影響をどう見るかであります。情報革命が進めば航空をはじめとするすべての交通需要は大幅に減少する。そのことが、情報革命のメリットの1つであるとしばしば論じられています。しかし、そのような議論は、旅行を労働あるいは不効用とのみ捉えていると思います。確かに、通勤は不効用であり、それが少なくなれば経済的厚生は増大するというのは正しいでしょう。しかし、多くの旅行はプラスの効用を持っています。むしろコミュニケーション技術の進歩は、新たなフェイス・ツウ・フェイスによる交流の必要性を生み出し、社会の創造的な価値を高める役割を果たすのではないでしょうか。ke E.Anderssonの言う、創造性が重視される21世紀のC-社会においては、フェイス・ツウ・フェイスによるコミュニケーションが増々増大し、R&D活性度の高い新しいビジネスの展開により、大きな航空需要が生み出されてくるのは間違いのないところです。
 次に、現在でもビジネス目的の国際航空旅客は、全航空旅客のうちの10%程度に過ぎません。90%近くは観光目的の航空旅客です。観光は世界でも最も大きな産業であり、今後もさらに拡大を続けると推定されています。特にアジアでは、近い将来に観光ビックバンが起こると予想する学者は少なくありません。観光においては、バーチャル・リアリティは真のリアリティではない。テレビでナイアガラの滝をみたから、行かなくてもよいという人は少ない。むしろ行ってみたくなったという人の方が多い。
 とくに、21世紀を生きる若い人たちが、単なる物見遊山ではなく、外国を知り、外国人を理解するために、気楽に海外に行くことができるよう、世界の空が開放されることが望ましい。若い人びとは、外国のできごとを人ごとと思わず、自分のこととして考えることができるからです。
 このような現状を踏まえて、ICAO、IATA、ACIなどの国際的な航空関連機関では、今後の航空輸送需要をどのように見ているのでしょうか。
 ICAOが2000年6月に発表した航空旅客の短期予測によると、2001年は世界全体で5.5%、アジア太平洋地域では7.2%の成長を見込み、2002年も世界全体で5.3%、アジア太平洋地域では7.2%の伸びを見込んでいます。一方IATAが2000年10月に発表した向こう3年間の短期予測によると、旅客は平均5.6%、貨物は6.7%の成長を見込んでいます。
 しかし、今年9月11日に発生した米国の同時多発テロにより、航空業界は深刻な打撃を受け、ICAOやIATAの予測は大きく狂ってしまいましたが、テロに対する安全性の確保が確認されさえすれば観光客の航空需要は案外早く回復するのではないかと見られています。ICAOによる2010年までの予測は、旅客は世界全体で4.5%、貨物は6.0%と高い伸びを見込んでいますが、その中期見通しには、あまり大きな狂いは生じないと見て良いのでは無いでしょうか。
 これに対して、ACIが初めて公表した航空輸送需要に関する予測は、ICAOやIATAが独自に予測として発表した短期予測値や中期予測値よりは多少控え目となっていますが、それでも確かな航空市場の伸びを予測しています。さらにACIは1999年から2020年までの航空輸送需要の長期予測を行っていますが、それによると、世界全体の航空需要の年間伸び率を3.3%と推計している。そのうち国内市場の伸び率は3.0%、国際線のそれは4.0%となっています。
 世界規模での総旅客数の年間伸び率は、北米が2.6%、ヨーロッパが3.4%、これに対して中南米およびアジア太平洋が5.0%となっています。また、2020年までの航空貨物の年間伸び率を4.6%と推計しており、航空旅客の伸び率を大きく上廻っています。航空貨物の成長率の高い地域は、アフリカ(5.5%)、中南米(5.2%)およびアジア太平洋(5.1%)となっています。このような旺盛な航空需要の伸びに応えるため、当然のことながら、国際空港のエア・サイトやターミナル・サイトの施設の整備拡張や、航空管制機能の強化が、世界的に焦眉の急となってきています。
次に21世紀におけるエア・ラインの新たな戦略について見てみましょう。
[4.21世紀におけるエア・ライン(航空会社)の新たな戦略]
 航空会社間の国際競争力のかなりの部分は、路線網をいかに便利な時間帯に、便利な空港に、しかも頻度を密にして提供するかにかかっています。つまり、航空ネットワークが密になることこそが、航空輸送が便利になるということです。世界の航空会社の間で合併、吸収、提携、共同運行などが盛んになりつつあるのは、各航空会社が航空機のスケジュールを相互調整することによって、ネットワーク性を高めようとしているからです。
 世界の航空会社がネットワーク化を進めてきた技術的な背景には、コンピュータ・リザベイション・システム(CRS)の開発がある。CRSによって航空会社は個別の座席を売りに出すことができるようになりました。そして、それが、イールド・マネージメントにつながって行った。それぞれの座席の販売価格を購入の時期や、その便の需要や、シーズンや顧客のニーズに応じて管理し、それによって利潤最大化を図ることができるようになりました。
 もう1つの航空会社の有力な戦略はコード・シェアリングである。コード・シェアリングによって、機材の合理的な運用をはかりながら、路線網を拡大し、さらに需要を増大させていくことができるようになったため、コード・シェアリングは最近いちじるしく拡大してきています。
 このように、CRS(コンピュータ・リザベイション・システム)とイールド・マネージメント、そしてコード・シェアリングにより、世界的な規模での航空会社の提携(アライアンス)が進み、世界の航空の姿は急激に変化しつつあります。
[5.これからの航空機と航空輸送の構造変化]
 世界を代表する欧米の旅客機2大メーカーが、21世紀初頭の新型旅客機開発をめぐって展開する競争の構図が明らかとなってきました。
 次世代旅客機の開発を先に決めたのは、西欧のエアバス・インダストリー社。大型機市場を事実上独占している米ボーイング社のB747型ジャンボ機を上廻る標準550席の超大型機A380(図−1)の開発を2000年12月に発表しました。就航開始は2006年初頭を予定しています。エアバスA380は、現在世界を代表する航空会社6社から50機の確定受注と42機のオプション発注を獲得しています。
 A380は欧州の航空宇宙産業が誇る優れた技術の結晶であり、既存の大型航空機に比べ、15〜20%低い運航コスト、10〜15%長い航続距離、そして49%も広い機内床面積に標準550席の座席を提供する仕様となっています。


(図-1)
 一方米ボーイング社は、航空市場の中心は、今後長距離を飛べる小型機になると予測し、超大型旅客機B747Xの開発を凍結して、2001年3月、音速に近いマッハ0.95の速度で飛行する長距離型の高速旅客機「ソニック・クルーザー」(図−2)の開発に力を入れる方針を打ち出しました。

(図-2)
 具体的な数字を挙げてみると、座席数は200席から300席とかなり幅は大きい。座席数はメーカーよりもむしろエアライン側のイニシアティブによって決められるでしょう。速度はマッハ0.95以上と音速にぎりぎりにまで迫る速さです。巡航高度は40,000〜50,000フィート、航続距離は9,000マイル(NM)を想定しています。そして、東京・ニューヨーク間で従来のジェット機と比べて、約2時間の時間短縮が可能であるとしている。
 今後も増え続けると予測される航空需要に応じた旅客機の使い方に関する見方には、両社で対照的な違いがあります。エアバス社は、乗客の増加に対応していくため、航空会社はより大型の旅客機を使うようになるとみています。これに対して、ボーイング社は、今後は拠点ハブ空港を経由しない直行便が増え、目的地へより速く直行したいという乗客のニーズに応じるため、より高速の旅客機が選ばれるようになるとみています。より安い運賃を求めて超大型機を選択するのか、通常より高い運賃を支払っても、より高速のソニック・クルーザーを選択するのか、いずれにせよカギを握るのは利用者のニーズです。
 一方、国内線や近距離国際線では、中小型旅客機の機種再編や新規導入が進んでいます。中小型機は路線ごとの需要に柔軟に対応することができ、ムリ・ムダのない運航が可能となり、機種見直しで保有機数を減らせば整備コストも下げられるからです。また、運航回数を増やすことにより、航空旅客が求めるフリークェンシー・サービスを行うことが可能になるからです。
 A380ワイドボディ機の登場、超高速のソニック・クルーザーの開発、国内線や近距離国際線での中小型機によるフリークェンシー・サービス、このような将来の航空環境を展望して、ACIは今後ハブ・アンド・スポーク形の空港展開は沈静化し、直行路線の拡大が続くものとみています。
 以上のような考察に基づいて、最後に21世紀の大交流時代における国際空港の整備について考えてみたいと思います。
[6.大交流時代の国際空港の整備]
(1)国際空港整備の必要性
 21世紀の大交流時代を迎えて、経済・文化・社会等、国民生活をとりまくあらゆる活動が諸外国との活発な交流を通して展開していく時代となってきました。このような時代において、航空は人および物の円滑な交流を支える最も有効な手段の1つとして、その意義を飛躍的に増大させていくものと考えられます。このため、国際航空ネットワークの拠点となる国際空港の整備を時機を失することなく進めることにより、国際空港の整備がそのボトルネックにならないように努めることが喫緊の課題となってきています。
 また、国際空港の整備は、利用者、すなわちカスタマー(Customer)にとっては、航空企業の自由な競争の機械の拡大を通じて、航空輸送サービスの質の拡充と量的拡大につながること、周辺地域にとっては、雇用の拡大、経済の発展等の波及効果をもたらすことに留意すべきです。さらに、国際空港の整備を具体的に進めるに当たっては、空港が地域社会に及ぼす影響を適切に評価し、地域社会との共生という視点に立つよう努めることが必要です。
(2)環境にやさしい空港づくり
 21世紀の人類社会の目標であるサスティナビリティとは、単に環境面だけの問題ではなく、社会・経済・環境という3つの要素のバランスをどうとるかということである。このため、国際空港の整備においては、先ず、サスティナビリティの理念を明確にし、サスティナビリティのマネジメント・プロセスづくりから始めなければなりません。その上でサスティナビリティを達成するための戦略づくりが重要となってくる。つまり、経済的な成長を達成する、雇用目標を達成する、慎重に自然資源の活用を図る、社会的なニーズを勘案する、などの他の戦略とのバランスにおいて、環境保全、さらには一歩進めて環境創造のための戦略をいかに構築していくかが重要となってきています。
 このためには、従来の空港機能のみを重視した国際空港づくりから、カスタマーへのサービスや自然や地域社会との共生を重視した空港づくりへと、空港計画のパラダイムを転換していくことが重要です。さらに、航空機の騒音問題の解決を図るとともに、野生生物や海域生物とも共生していくことのできる国際空港とするためには、「環境管理計画」(Environmental Management Program)を策定するとともに、環境監視システムを構築し、データを広く地域住民に公表することにより、アカウンタビリティの精度を向上させていくことが必要です。さらには、市民もまきこんで、国際空港と周辺地域との共生を図っていくためのパブリック・インボルブメントのシステムづくりも重要です。
(3)国際空港整備のための技術開発
 最近整備が進められている国際空港の多くは、大都市圏に立地しているため、用地確保の困難さや、航空機騒音への配慮などの厳しい制約条件のもとで、経済的かつ効率的な整備に向けての、さまざまな技術課題に取り組むことにより、その解決を図っていくことが求められています。
 国際空港の建設・整備のような大規模プロジェクトを、コストの縮減をはかりながら、急速施工によって建設していくためには、IT技術に支えられた施工管理(Construction Management)システムの構築が必要となってきます。また、関西国際空港の建設整備のように、軟弱地盤を克服して国際空港を造成しなければならないような場合には、軟弱地盤の改良技術の開発が必要となってくる等々、それぞれの空港の建設現場の気象・海象・土質などの自然条件や社会経済条件によって、それぞれの建設現場に特有の新しい技術開発が求められることとなります。要は、これら新しく開発された技術を公開し、空港整備の関係者が、お互いに新技術を共有していくことが、これからの世界の新空港づくりには必要となってくるわけです。次に、国際空港の運用にあたっては、カスタマーへのサービス向上が求められるとともに、きびしい採算性の確保と空港経営の健全化、施設運用の効率性の確保、空港間の連携と競争を視野に入れたサービス・レベルの向上等について、より一層の戦略性が求められます。これらの課題を解決していくためのマネジメント支援システムとデータベースづくりが重要になってくると考えます。
さらに、国際空港の空域の有効利用を図るため、運輸多目的衛星(MT-SAT)を用いた航空交通管制システムや管制データリンク等の次世代航空保安システムの開発・整備を図ることが重要です。また、新しく開発された航空交通管制シミュレーターを用いて管制官のトレーニングを実施することにより、航空交通管制の能力向上と、航空機運行の安全性の確保に努めることも重要です。
(4)国際空港と地域整備
 国際空港のインパクトを活用し、地域整備を行っていくためには、人や物の流れを増幅して、そこから新しい価値を生み出すためのシステムづくりが要請されます。そのためには、国際金融、国際物流、コンベンションなどの各種の国際的な機能の強化・育成につとめること、国際観光産業の振興や研究開発型の知識産業(knowledge intensive industry)の育成を図ること、などにより、地域の魅力づくりに努めることが重要です。
 また、国際空港と地域が一体となって、世界各国から、多くの人びとや外資系企業を惹きつけることのできるような魅力づくりを進めることが重要です。すなわち、それぞれの地域の歴史・文化・風土・自然に根ざした独自のアイディンティティを主張できるような地域づくり、都市づくりを進めること、エンタープライズゾーンの設定など税制上の優遇措置を講ずること、外国人にとって、訪れてみたい、住んでみたい、働いてみたいと思うような、アメニティ豊かでホスピタリティに富んだ“まちづくり”を進めることが重要です。
 さらに、国際空港と地域を結びつけるアクセス交通の整備も重要となってきます。世界の国際空港は高速道路のネットワークによって地域と結ばれているし、パリのシャルル・ド・ゴール空港にはTGVが乗り入れている。フランクフルトやデュッセルドルフなどドイツの国際空港は、インターシティ・エクスプレスのネットワークによってドイツ各地と結ばれている。国際空港と地域が共存共栄していくためには、国際空港のヒンターランドを高速道路や高速鉄道のネットワークで覆い、国際空港へのアクセスを便利にしていくことが重要かと考えます。
 ご静聴ありがとうございました。


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