司 会
皆様、お待たせいたしました。
それでは「国際空港シンポジウム2001」パネルディスカッションを行います。
このパネルディスカッションのコーディネーターは、神戸大学教授、黒田勝彦先生にお願いしております。
それでは黒田先生、よろしくお願いいたします。
黒 田
ただいまご紹介を賜りました神戸大学の黒田です。
これから、先ほどのスピーカーの方々がお話しになりました内容を踏まえて、パネルディスカッションに入りたいと思います。
その前に、まずフロアからたくさんの質問を頂戴していますので、その質問の全部を紹介するわけにはいきませんが、重要な質問だけをピックアップさせていただき、先ず、パネラーの方にお答えをいただきたいと思います。
最初は、関西国際空港の廣瀬さん宛のご質問です。
質問の内容は「一期の経験を生かして二期工事に取り組んでおられますが、二期の沈下予測はどのようにされているのか、お教えください」という質問です。
まず、順番に廣瀬さんのほうから、もし簡単にお答えできるようでしたらお願いしたいと思います。
廣 瀬
お答えします。
ご承知のように、一期の空港島を建設する際にも、沖積層はもとより洪積層の砂層、粘土層にさまざまな計器を入れて、計測をしてきました。そういった一期島での膨大なデータをまず活用しています。さらに今日の講演で申し上げたように、4本の400m級の土質ボーリングを行っており、そのデータも加えて洪積層の砂層とか粘土層の平面的な広がり、さらには粘土層の力学的な特性等について調査してきています。
さらに、洪積層の砂層の平面的な広がりについては、一期以降、さらに新たな地質学的な知見が出てきまして、そういった知見を活用しています。
さらに、粘土の圧密試験については、一期では標準圧密試験をベースにしていましたが、二期では新たな試験法で行っています。
そうしたデータを用いて、私どもは新たな沈下の予測モデルを開発し、それを活用して
今現在、平均18mと予測をしています。
この新たな予測モデルとは、基本的には一期で得られたさまざまなデータをもとにしたモデルであり、グランド・ウォーター、要は洪積層の砂層の間隙水圧について、グランド・ウォーターの解析をします。それから粘土の圧密の解析については圧密方程式を解く解析をします。それを交互に繰り返して、一期で得られたデータに合うようにイタレーション(繰り返し計算)を行って最終的な沈下予測を行っています。
黒 田
どうもありがとうございました。
もし後で時間が余るようでしたら、さらに詳しいディスカッションに入りたいと思いますが、一通り質問だけを片付けさせていただきたいと思います。
2番目に香港の陸さん宛に、3名の方から質問をいただいています。3人の質問はいずれも重複している部分がありますが、たまたま英語でいただいている質問にその内容が含まれていますので、3つの質問に答えていただきたいと思います。読み上げさせていただきます。
「盛土の土について、例えば沈下であるとか、強度であるとか、それに関して技術的な基準がありますか」と。
それから2番目の質問です。「どういった手順でこの目標の達成をなさるのですか」と、この目標というのはどういうことを指しているのかちょっとわかりませんが、そういう質問が来ています。
3番目の質問です。「盛土ですが、これが完成した時点でその土壌の質はどうなるのでしょうか」ということです。
まず1つ、はっきりさせておきたいことがあるのですが、私どものところでは具体的な盛土材に関して、埋め立てに使う盛土の土についての品質基準は設けていません。しかし、盛土材の特性は決めているということを申し上げておきます。ですからそのフィルマテリアル(埋立材料)の質についてはそれぞれのエリアごとにこういうものを使うという仕様を設けています。
例えば皆さんご存じかと思いますが、粒度分布とか、粒形の分布とか、これを1つのパラメータとして材料のコントロールをしているということです。例えば2本の滑走路がありますが、こちらの埋め立てに使っているのは、層にして投入していきますので、ここで
は特定の場所から採った岩石を使っています。そのロックフィルの特性としては巨礫を使います。巨礫の場合にはサイズが2m以上のものを指します。また、ある一定の割合で砂礫を使います。これが概ね巨礫の間に入るようにします。ごくごく一部、非常に細かいものも使っていますが、このように比率を決めています。したがって、そこのところで粒度分布をコントロールすることで私たちは埋め立て材料の質が確保できると考えています。こういった形でコントロールをしています。間接的な質の管理かもしれませんが、埋立地についてはそういったアプローチをとっています。
2番目の質問ですが、目標達成をどうするのかと、これは多分、質の管理に関することなんでしょうか。例えば私たちはフィルのアロケーションプランというのを持っていまして、パーセンテージを決めています。それぞれその場所によって使っている土壌も違っているわけです。これはコンサルタント、コントラクターがそれぞれの工法を使ってやっています。例えば海砂についてはボトムダンピングする。これは海底9mのところから採ります。それから今度はそれを使ってまた他の層を入れる。それから表層についてはポンピング工法で入れていきます。砂と水の混合物をポンプで吸い上げて、それを使って埋め立てをしていくという形をとっているわけです。質に関してはこのような形で行っており、これに関してはかなり厳しい質のコントロールを行っています。
一方、その基準(質)さえ満たしていれば、工法はコントラクターにお任せするということです。
それからまた、例えばサンプルを取って、そしてインスティテュート(研究所)でテストを行います。土壌検査を行っています。それによって最終的なマテリアルはどういうものが入っているかということの検査もしています。また、実際に表層下に計器を埋め込んでいます。これは先ほど廣瀬さんもお話しになったとおりで、例えば水圧センサー等の計器を入れています。そういった計器を使ってその現場でのマテリアルの性状というものを理解できるようにしています。
それから、実際にインスティテュートでその現場での土壌の挙動といったものも測定できるようになっています。これも質のチェックに使っています。コントラクターのほうがこういった特性を満たして、そしてその目標を達成するわけですが、その目標を達成するにあたっての工法や手法については、コントラクターにお任せしているということです。
それで、建設工事を実施する際にモニタリングを続けます。モニタリングを続けることで情報を取っていきます。その情報に基づいて設計をしています。こういう手法を使うこ
とによって我々は沈下についてもコントロールすることができるということです。
黒 田
ありがとうございました。
それでは、次の質問に移らせていただきたいと思います。質問は、オスロ空港のニルセンさんに対するご質問です。ニルセンさんには2つの質問がきています。
1つ目は「プレゼンテーションの中で赤外線システムを導入した融雪対策を検討しているというお話しでしたが、ランニングコストはどの程度見積もっていらっしゃるのでしょうか」というのが最初の質問です。
2番目の質問を申し上げます。「化学薬品の長期的蓄積による環境影響の可能性が出るのではないか。これに対してどういうふうに考えておられるかご説明ください」、以上です。
ニルセン
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
赤外線の融氷システムにつきましては、まだ経験がないのです。従って、調査をしようとしているところです。現在のところ、アメリカで小さな規模のテストをしています。小型の航空機のためのテストです。3年前にニューヨークの空港がオープンした時に、ニューアークのところでフルスケールのシステムをつくりまして、757のような航空機にも対応できるようなシステムをテストしました。この融氷のコストを通常の融氷のコストと比べることができるわけです。これで私どもはノルウェーでぜひやってみたいと思ったわけです。ニューヨークと私どもとは気候は違うわけですが、私たちにとっても非常に大きな問題であり、特に航空会社にとっては非常に大きな問題でした。従って、テストによりパラメータを比較してみたいと思ったわけです。
それからもう一つ非常に重要なことは、融氷するのにどれくらい時間がかかるか、赤外線を使うことによって、通常のものとどのぐらい時間が違うのかということです。かなり時間が節約できるということです。今のところはここまでです。
それから2つ目、化学薬品の土壌への蓄積の問題ですけが、これは私ども、非常に懸念しているところです。私どものリサーチプログラムの中にもこのことが入っています。まだ3年なので十分なデータがないわけです。特に土壌蓄積の危険性ということについてはデータがありません。まだわからないのは、例えば添加剤が蓄積した時にどうなるのかと、例えば防炎剤ですとか、防腐剤といった化学薬品が入っていた場合にどうなるのかと、これを非常に厳密にモニターしようとしているところです。
プレゼンテーションの中で言いましたが、できるだけ添加剤を減らそうという方向に動いています。また当局のほうからもそういう指令が出ています。従って、オスロにおきましては、産業においても添加剤を使わないようにと圧力を与えています。これが非常に有害な部分だと考えているからです。
黒 田
ありがとうございました。
それでは次の質問に移らせていただきます。マカオのチャンさんに対する質問です。
「マカオ国際空港は、滑走路のみを沖合いに建設した独特の形状をしていますが、なぜ滑走路だけを沖合いに出したか、そういう計画になった理由をお教えください」ということです。
チャン
設計において、幾つか検討されたことがありました。まず初めに、マカオの土地の面積を考えてみますと、25km2もないわけです。そして、そのほとんどの土地の部分というのは半島であり、人口密度が高い。50万人の人口としては、世界の中でも最も人口密度の高い地域と言ってもいいかもわかりません。したがって、この立地に関してフィジビリティースタディーが50年前に行われ、その結果、タイパ島の近いところに選ばれたわけです。
他にも幾つか検討されたことがありました。空港の着陸について考える場合にも、風の方向、風速、そしてまた隣接する空港との間のフライト・インフォメーションの状況などについても検討する必要がありました。したがって、ご覧のように、実際、滑走路そのものがそれぞれの島、あるいは半島よりも大きくなって長くなっています。これは着陸方向について考慮した結果でもあり、騒音公害について検討した結果でもあります。
そして、最終設計においては、このような立地が選ばれたということです。経済的な理由もありました。我々は、建設コストを下げるために、コンサルタントにたくさんお金を使っており、実際にほかの地域につくったとするならば、もっと運用面で問題が出たり、騒音公害などもあるということで、最終的にコンサルタントからこういった立地が提案されたわけです。これまでのところ、その結果はよかったと思っています。
黒 田
それでは、スキポール空港のリンスホーテンさんに質問がきています。質問は2つあります。
1つは「アムステルダム国際空港では真空圧密工法を採用されているというお話しでし
ンたが、具体的に従来工法とどのような違いがあるのかご教示ください」、これが最初の質問です。
2つ目の質問は「スキポール空港では地下水位がとても高いように思いますが、排水対策、マンホール、ピットの防水対策はどのように行っておられますか」、これが2つ目の質問です。
以上、お願いします。
リンスホーテン
喜んでその2つの質問にお答えさせていただきたいと思います。
まず、従来法と真空圧密の方法の違いということですが、私の発表の中でも申し上げましたが、もちろん同じようなパイルを使っているのですが、ただ、真空圧密にすると加速できるということです。それからポンプを使って地中に真空状態をつくる。それによって沈下を加速してやる。したがって、短期間にかなり簡単なテクニック、簡単なポンプを使って非常に大きな効果が出せるということです。それからコスト効果がある方法です。というのはこれによってプロジェクトのスピードアップを図ることができる。9カ月以上のスピードアップにつながるのです。
それから2番目の質問ですが、地下水位の問題です。これも先ほどスライドでお見せしたかと思いますが、スキポールの場合は、もともと湖があったところであり、まだ常に水抜きを続けています。毎日毎日ボルダーから水を抜いているのです。堤防から水路へと水を排水しています。そうすることで地下水位のレベルのコントロールをしています。我々が行っているのは、できるだけ滑走路の足元をドライにするために、地面よりも滑走路を少し高くしています。少し高さをつけた滑走路にすることも、1つの排水対策です。
黒 田
フロアから頂戴しました質問は以上です。
それでは、今日のパネルディスカッションの具体的な内容に入りたいと思います。
時間の都合上、2つのトピックスについて議論をさせていただきたいと思っています。
このプレゼンテーションをお聞きになってお感じになっておられると思いますが、内容が多岐にわたっています。
まず、関西空港と最も関係の深いマンメイドアイランドに関するトピックスです。埋立造成において、それぞれの空港で最も難しい問題は何であったのか。これをお聞かせいただきたい。そしてその困難な課題をどういうふうに解決されたのか、これをまず各空港の
スピーカーの方にお聞かせいただきたいと思います。
大変恐縮ですが、お一方5分以内でご説明をお願いしたいと思います。
最初に、関空の廣瀬さんからお願いします。
廣 瀬
特に二期工事ですが、技術的に非常に難しい課題は、1つは本日の話でも申し上げましたが、沈下の予測と管理です。もう一つは主として施工管理になるわけです。私どもの造成工事の基本的な考え方といいますのは、沈下量は大きいのですが、沈下に逆らわず、沈下量と荷重となる埋め立てとの層厚のバランスを見ながら、沈下をコントロールしていくという工事です。そのためにいかに層厚の管理を行うかという点、これが恐らく2つの大きな課題かなというふうに認識しています。
沈下につきましては、先ほど簡単に申し上げましたが、今の一期の空港島ですが、非常にたくさんのボーリングをして洪積層の地盤の性状について調査をしました。それでもなかなか難しかろうということで、一期の空港島の造成にあたっては、一部の区域に先行して埋め立てる工区をつくりました。そこで洪積層の沈下挙動を計測して、今日の説明で申し上げたように、11.5mという沈下量を出したわけです。
二期ではさらに新たな知見を加えて、18mというふうに予測しているわけですが、恐らく沈下量そのものについては大きな間違いはないだろうというふうに思っています。埋立造成工事が進むにつれて、一体全体今、起こっている沈下がどういう理由で、具体的にどういうふうに起こっているのかという現象を解明していく必要があるわけです。そのために今までやったことのないような圧密試験や、あるいはその他の新たな試験法を活用して、さまざまな試験を繰り返しているところです。
そういう面で、今後、埋立造成が進んでいくにつれて、沈下がどこで、どういうふうに起こっているかということの分析がこれからの課題だろうと思っています。そのためにいろいろな計測機器を本日紹介しましたように設置しています。
以上が1点目の技術的な課題と、それに対する克服です。
2つ目は、層厚管理です。土運船で、一期も二期も海底の地盤は非常に柔らかいわけで、土運船で土を捨てる工事を行うにしましても、工事の初期段階では非常に薄く均一に土を捨てていくことが非常に重要になるわけです。地盤の強度が上がってくると、厚い層厚で施工が可能になってくるということがあります。我々は沈下そのものよりも、むしろ沈下を引き起こす原因となる埋め立ての荷重をコントロールしていこうということで、今日申
し上げましたような非常に綿密な層厚管理と沈下管理を行っています。
今後、来年の春ぐらいからリクレマーバージを用いた工事が始まるわけですけれども、水面を切った段階から特に深いところの洪積層の沈下が顕著になってくるわけでして、そういった沈下の状況を見ながら、いかに空港島全体で埋め立て土の面的な層厚管理をしていくかということがこれから大きな課題になるだろうと思っています。今、私どもの基本的な考え方を整理すべく、さまざまな調査を行っているところです。
以上です。
黒 田
ありがとうございました。
沈下とその管理という問題に関しては、香港のチェックラップコック空港の建設でもお話しいただいたかと思います。特に埋め立ての不同沈下を防ぐ方法、あるいは大変急速施工をされたということですが、モニタリングと沈下の管理、これとの兼ね合わせはどういうふうに計画されて、実際に施工に移されていったのでしょうか。
建設段階におきましては、我々は工事業者を使っているわけです。その工事業者が専用の機器を使って計測を行っています。また、チームを編成して、それぞれの計測データを収集するということを行いました。そのチームはエンジニアのチームであり、集めたデータの解析を行いました。それに基づいて報告書を作成しています。それぞれの工区において沈下がどういう状態にあるかということをデータとして、報告書として出しています。工事は終わりましたが、この仕事は今も続けています。この空港の工事が最終的に完成するまでずっと続けていきます。
我々にとって一番大きな技術的な課題というのはやはり沈下ですが、今の沈下ではなくて、これから先、3年先、5年先の沈下をどう予測していくかということ、これが一番大きな課題であるわけです。私どもは実データを現場から集めています。そうすると、沈下の挙動がスムーズではない、すなわち均一ではない。数学モデルどおりに沈下してくれないということがわかったわけです。いろいろなパターンがあり、いろいろな要因によって、いろいろな段階ごとに沈下が起きます。例えば航空機も1つの圧となり、それによっても沈下が起きるわけです。また、場所によっては近くにニュータウンが開発されたと、空港の近くにニュータウンの建設がありましたので、それによっても状態が変わる。地下水が変わる。それによってまた沈下の速度が変わったとか、いろいろな要因を考えていかなけ
ればいけないわけです。それにやはり目を常に向けていかなければいけない。単に数学モデルを使ったからそれで沈下が予測できるというものではないのだと、やはり実データに基づいて見ていく必要がある。私たちはそれをやりましたが、それが一番強力な手段であったと思います。
もう一度繰り返しになるかもしれませんが、モニタリング、実際の地盤の挙動というものをモニタリングしていくということが一番大事だと思っています。これは我々の過去の経験でも、もうすでに実証済みです。
黒 田
ありがとうございました。
チャンさんからマカオの空港につきまして、特にAGLシステムのお話をいただいたのですが、ランウェイ島(滑走路のある人工島)の埋め立てに関して、特にこういうふうに工夫したというようなこと、エンジニアリング的な問題はありますでしょうか。
チャン
私は電気技師で、土木技師ではないので、十分お答えできるかわかりませんけども、できるだけお答えしたいと思います。ほかの方とはその点で違いますが、ただ私が覚えている限り非常に短期間の建設工事であったと思います。そして埋立工事が始まりましたのは92年の1月で、完了したのが95年の5月でした。したがって14カ月かけてすべてのシルト層を浚渫することが必要となりました。それと同時に、土捨て、そして石などの工事も終わりまして、その後でスピードアップしながら転圧、締め固めを行ったということがあります。そしてドライメソッドを使いながら、そしてまた砂杭などもかなり使いました。そしてこういった転圧、締め固めの技術などを駆使して施工したと聞いています。
そして空港建設完了後、地元の土木工事会社を雇って、モニタリングを担当してもらい、沈下予測などを出してもらっています。そしてまた沿岸構造物の動きなどもモニターしています。過去五、六年の経験から言いますと、沈下速度は安定化の方向に向かっていると思います。
いずれにしましても、皆さんの中でご関心のある方はEメールをお送りいただきましたら、マカオに帰ってからできるだけ回答を差し上げたいと思います。
黒 田
エレクトロニクス・エンジニアリングの専門家にシビル・エンジニアリングの質問をして申し訳ないのですが、あとは特に地盤改良、あるいは空港の施工上の問題でこういう工
夫をしたとか、あるいはこういう点が非常に難しかったというような問題を抱えられたことはありませんか。例えばオスロのニルセンさん、いかがでしょうか。
ニルセン
この分野では特に困難なことというのはなかったと思います。大きな国であります。人口も少ないです。したがって空港の場所を探すのは簡単なのです。もちろん海まで滑走路を延ばさなければいけないということはありましたけれども、海底に岩盤がある為全く問題はありませんでした。
ニルセン
問題はよく似ているかと思うのですが、ただ規模的には非常に小さいと思うのです。皆さんの困難に比べたら10分の1ぐらいでしょうか。例えば関西新空港は沈下が18mというお話も聞きました。私たちの場合は本当に数メートルということですから、そんなに大した規模ではなかったのです。
それから、不同沈下を防ぐためにはどうするかということです。その後にメンテをしなくてもいいようにすると、これが1つの課題ですけども、ただ私が申し上げた真空圧密法以外には特別な工法は使っていません。あとは滑走路の建設にあたっても今までのやり方でやっており、また、真空圧密法を使ったということでコスト効果はかなり上げています。
黒 田
将来、スキポール空港、オフショアマンメイドアイランドのほうでも考えていると、計画があるというお話でしたが、技術的な問題等の検討というところまではまだ入っておられないのでしょうか。
リンスホーテン
今の時点では、運用面でのフィジビリティー・スタディー、それから経済面でのフィジビリティー・スタディーはやっています。それから私自身、技術的な調査はどうなっているかということはあまり知りません。ただ、そういった技術調査はまだやっていないと思うのです。私たちが人工島、これは例えば今からまだまだ先、2025年とか、そういった先のことになります。経済的な問題がまず先行するということです。そういった人工島をつくるということはケースにはされたのですが、今のところあまりにもコストが大きすぎてちょっと中断ということなのです。
これをつくりますと、関西に比べてかなり沖合いに離れています。大体沖合い5kmから10kmのところにできることになっていますので、そうなりますと、やはりアクセスを
どうするかということも問題になってくるかと思います。それから北海というのは波が非常に荒いところですから、簡単ではないと思うのです。
黒 田
北海の厳しい気象条件の中でのオフショアマンメイドアイランドの建設というのは、関空も大変難しい技術を駆使しなければいけませんが、またオランダ特有の難しい問題もあろうかと思います。
さて、今日のもう一つの話題に移りたいと思うのですが、それぞれ空港を建設する、あるいは運営する上で、環境の問題というのは皆さんプレゼンテーションの中でご指摘されたように、これは無視できない問題です。
今から各空港固有の環境問題というのは何であったのか。もちろんオスロの問題は、他の空港とは少し違って、貯水池の上に建設された空港ということで、地下水の融雪対策のケミカル・マテリアルによる地下水汚染というのが非常に特殊な問題としてあります。特に東アジアの空港ではそういう環境問題はあまりないわけですが、各空港で特殊な環境問題、あるいはオキシアマンメイアイランドだったらこういう問題があって、実はこういうふうに工夫して設計なり施工に生かしたというようなことがあろうかと思いますので、それについて順番にお聞かせていただきたいと思います。
まずは関空のほうで、固有という言い方はおかしいかもしれませんが、どういう環境問題というのが一番シビアで、それに対してどういうふうな対策を講じたかお聞かせいただけたらありがたいと思います。
まず廣瀬さんからよろしくお願いします。
廣 瀬
今日は、関西空港の原点は環境対策というふうに申し上げながら、環境の話をしなかったわけですが、今日、会場の皆様方にお渡ししています「カルド」とこういうふうに書いたファイルがあると思いますが、その中に二期の建設工事に関するブローシュアが入っていると思います。それの21ページから24ページまでをご覧になっていただきたいと思います。
環境というと非常に広い範囲で、私が答えられますのは建設工事の実施に係る環境ということでご容赦をいただきたいと思います。1つは21ページ、22ページにありますような環境監視です。非常に大規模な埋立工事をおこなうということで、私どもは工事区域から外に濁りを極力出さないということで、さまざまな工夫をしています。1つは、一般的
にやられていることかと思いますが、工事区域の外側に二重にシルトプロテクターを展張しています。それから土運船で土を捨てるということに伴いまして、濁りの原因となる小さい粒子がやはり20%以下ではありますが、含まれています。このため、土運船で土を捨てると濁りが拡散することは避けられないことなのです。私どもは土を捨てるに伴って出る濁りができるだけ外に出ないようにするために、シルトプロテクターを二重に張っていますが、さらに、できるだけ外に出ないようにするために、日々流れのシミュレーションを行っています。流れのシミュレーションをしながら濁りが拡散しにくい場所を施工対象の場所にするというような工夫を今までしてきています。これが1つの監視という面で我々がやっていることです。
もう一つは、環境対策というよりも「環境の創造」という観点です。23ページ、24ページにありますように、緩傾斜の石積護岸を利用して、広大な藻場を造成していこうとしています。このために、これまでも調査をしてきました。二期では今、24ページにあるような対策をし、3年程度で藻場が造成できるようにということで、計画をつくっています。ここでは藻場を造成するためにどういうことを行っているかということについて、3点申し上げます。
1つは、24ページの図にありますように、すでに一期の空港島では広大な藻場が造成されているわけですけれども、その藻場にある藻床ブロック、藻がついたブロックがあるわけですけれども、それを二期工事にもってくるということです。
2つ目はスポアバッグという藻の胞子が入った袋のようなものですが、そういうものを利用して、胞子が拡散することによって、その胞子が緩傾斜の石積護岸のどこかに着床することによって藻場が造成しやすくなるというようなことを考えています。
3つ目はやはり24ページにありますが、通常の消波ブロックの表面にこうした溝をつくって、胞子等が浮遊してきたりして着床しやすい、あるいは最初からそこに藻を着床させておいても波等ではがれにくくなるように、こういった溝を切った消波ブロックを製作しています。
今、申し上げましたような3種類のものを緩傾斜石積護岸の5カ所から10カ所、先ほどの消波ブロックは5カ所ですが、そのほかのものもある間隔を置いて設置をしています。藻によっては成長しやすい時期、成長しにくい時期があるわけですが、そういったことを考えながら3年間で計画的に藻場を造成しようということを考えています。
以上です。
黒 田
ありがとうございました。
それでは、香港空港の陸さん、同じ質問ですが、施工ないしは設計の中で環境対策として特にこういう点を考慮したということがありましたら、お教えいただけますでしょうか。
最初に、私が申し上げたいのは、私たちが抱えていた海洋環境の特有の問題として、珠江の入り口にあるということで、特別な種のイルカが住んでいます。「チャイニーズホワイトドルフィン」と呼ばれているイルカです。これに対してどうやってその影響を回避するかということが非常に重要であり、濁土が非常に大きな問題になります。濁土によって小さな魚が死んでしまう。そうすると、イルカがえさとする魚がなくなるということなのです。
この問題を解決するために、我々は漁業省とも検討を重ねました。それからまた環境のチームがありますので、こういった環境チームの参加もいただき、タスク・フォースを構成しました。例えばそういった資源のレベルだとか、それからまた幼魚のレベルだとか、それも計算したのです。いろいろなパラメータを計算して、水の中の濁土は何パーセントぐらいであれば生きられるかということを考えました。建設によって、例えば溶存酸素のレベルだとか、それから濁土が変わってくると幼魚が減ってくるということがあります。その場合には少し工事を中断してやるということをやっています。それが収まってからまた工事を続けるということを行いました。政府が受け入れられるようなレベルでの対策をとっています。
それで、幼魚のレベルについてですが、これは非常にいいレベルが保たれました。というのは、この地域の濁土というのはかなり高かったのです。もともと建設工事を始める前から高かったのです。珠江からたくさんの土砂が流れてくるということがあります。したがって、もともとここでの濁土が高かったということもありますので、魚やイルカもそういったことにかなり慣れていたということがあるのです。ですから建設によってあまり大きな差異は生じなかったのです。
それから、もう一つは建設に伴う大気の質の悪化です。発破をかけると言いましたね。発破をかけて山を崩して、それを埋め立ての材料にしたということです。この地域は風が非常に強いのです。したがって、その発破をかけた時にできた、そういった粒子が風に乗って飛ぶということが問題になりました。そこでこの問題に関してはやはりチームを編成
して、実際に発破をするところの近くに溝を掘り、そこに水を入れておきます。それから実際に発破をかける前にそのあたりに散水をして、できるだけその粒子が飛ばないようにするということをやっています。
この工区の南側に地域がありまして、いろいろな建設の騒音や、大気に影響を与えたということがあります。そこでこの問題を回避するために、我々は小さな公園をチェラコック島の端につくりまして、それを音の緩衝地としたわけです。建設の騒音に対して緩衝地域として公園を設けた、緑地をつくったということがあります。
それから、もともとの島の東海岸は触らないようにしています。そうすることで沿岸環境をもとのチェラコック島のまま保ったのです。
実際に建設工事を続けてきましたが、その建設にあたりましても既存の野生生物に影響が出ないように配慮しています。中には非常に貴重な種というものもありますので、その場合には、例えば生息地をしばらくの間、近くにあります国立公園に移すということもおこないました。それから、考古学者も参加して、実際にそこに何かないかということもチェックをしたわけです。考古学調査をする際には、やはり建設を少し止めて、考古学調査を行い、そこに考古学的な遺跡がないということを確認してから工事を行っています。
黒 田
オスロ空港のニルセンさん、今、オペレーションの中での環境対策、地下水汚染対策をお話しいただいたのですが、特に空港を建設される途中、施工の途中での地下水の汚染対策等々に関連しまして、どういうことを対策としてお考えになったのでしょうか。
ニルセン
施工中は特別に設計したため池をつくり、そこに建設地の雨水を集めます。汚染がないように、そこで処理をします。そしてそれを土壌に戻すということをしました。
また、航空機の騒音のお話も出ていましたが、2番目に大きな環境問題なのです。大体6万人から7万人の人たちが騒音公害にさらされるわけです。しかし、1回ぐらいしか電話がかかってこないのです。新しいところでも、大体3,000人ぐらいの人たちが騒音にさらされるわけですけが、私たちの空港におきましては、非常によく訓練を受けている人たちがやっていますので、近隣の人たちがあまり騒音問題に悩まないようなシステムができています。例えば出発便や到着便に対して、空港の近くに住んでいる人たちには特別の防音壁を設けています。これは空港の費用でこういった防音壁を設けています。
また、廃棄物についても対策をとっています。例えばリサイクルが可能な廃棄物につい
て、リサイクルできるものと、できないものをきちんと分けています。それは市当局のほうで特にインセンティブを与えてきちんと処理をするようにしています。
それから、エネルギーにつきましても、できるだけ最適にエネルギーを使っていこうとしています。例えば、化石燃料をできるだけ減らしていこうとしています。実際に地下水をターミナルビルのエアコンの冷却に使ったり、一、二度、地下水を上げたり、また冬には地下水を汲み上げて、これを熱交換に使用しています。例えば、ターミナルを暖めるのに使うなど、地下水をいろいろ利用しています。
また、最後に申し上げておきたいのは、空港の交通ということです。空港から出たり入ったりする交通システムがありますが、将来の需要に適応するためには大量交通システムというものを新しく考えなければいけないと思います。香港でもやられましたように、オスロでも50%がハイスピードの電車を使っています。
以上です。
黒 田
マカオ空港につきまして、チャンさん、同じ質問ですが、チャンさんはシビル・エンジニアではないので、ひょっとしたら難しい質問かもわからないのですが、特にマカオ新空港の設計ないしは施工において、環境対策としてどういう工夫がされたか、ご存じでしたらお聞かせいただきたいと思います。
チャン
私が覚えている限り、実際建設施工中にやはり騒音問題が出てきたことがありました。マカオの空港は面積そのものも小さいわけですから、飛行機が近隣の上を飛びますと、やはりそこに住んでいる住民の人たちに対する騒音公害があるわけです。そして交通管制部との交渉の中で、高周波の全指向的な情報を得るということの中で、できるだけ住宅の上は飛ばないようにという交渉が行われました。
そしてもう一つ、環境への配慮ということにおきましては、珠江デルタというのは水深が非常に浅いのです。ですからそのような巨大なインフラをつくりますと、それがシルト化の問題にも影響を及ぼします。その一方で、我々は港湾局とも作業を進めて、高周波の研究者などの助けも得て、衛星写真を撮ってそのシルト化の状況を把握しようとしました。
現在までのところ、環境への変動の状況というのはまだ受け入れられる状況であるというふうに考えています。
黒 田
では、最後になりましたが、スキポール空港のリンスホーテンさんに同じ質問をお願いします。スキポール空港は、リンスホーテンさんもプレゼンテーションの中でお話になりましたが、環境対策に極めて先進的なと申しますか、大変苦労しておられて、いろいろな工夫をしておられる空港だというふうに伺っておりますが、設計ないしは施工上の環境対策としてどういうことを考えていらっしゃったかと、お話しいただければありがたいと思います。
リンスホーテン
先ほどもお話をしましたが、例えば真空圧密法の試験を行いました。これは98年のことであります。このテストは単にこの圧密工法がうまくいくかを見るだけではないのです。実はこれをやりながらさまざまな環境の側面についても試験を行っています。当局が恐れていたのは、この圧密工法を使うことで例えばこの地域、干拓地に対してその水質によくない影響を与えるのではないかという懸念もありましたので、それも試験しています。しかしながら、試験の結果は非常に満足のいくものであったということで、ゴーサインが出たわけです。それでこの方法を使おうということになりました。
特別な環境問題、実際に例えば滑走路の建設にあたっては大きな環境問題はありませんでした。ただ、スキポールの場合には特別な環境問題がありました。これは騒音公害です。これは建設ではなくて、空港の運用にあたってやはり航空機騒音の問題がありました。それをどうやって予防するかということですが、例えば防音設備を空港周囲の住宅のところにつくるとか、チャプター2の航空機の離発着をできるだけ少なくするとか、チャプター3の航空機だけにするとかです。また、騒音の計測点については40カ所ぐらいで騒音の測定を行っています。それによって風向きによっても滑走路の使い方を変えるとか、それから毎年我々は計画を立てて、将来はどうなるかということについての予測も立てており、それを報告書として発表しています。その計画を出して、政府の承認をもらうことになっているわけです。
それで、この数年間にこのプランを続けるかどうかということでいろいろ検討が行われました。2年前に実は40の計測点のうち、その飛行回数がある基準値を超えたところがあります。これは嵐だとか、いろいろな風向きの関係で通常よりも27回ぐらい多く飛んだというところもあるわけです。その場合にはやはり罰金を払わないといけないのです。というのは、私たちは政府に対し計画を出して承認をもらっているわけですが、その計画を超えてある地点をたくさん飛んだということで2,500万円相当の罰金を払っています。こ
れは私たちにとってはコストが非常にかかるのですが、計画を立てたらその計画を守らなければいけないということで、我々は自らそれを実行しています。
黒 田
技術的な課題、あるいは環境の問題、いずれも新空港、各国で新しい空港は需要という問題もさることながら、環境の問題、あるいは運営上の技術の問題、いろいろ問題を抱えているようです。
実は、特定のテーマに絞って深く議論をするというのがパネルディスカッションのあり方だと思いますが、お聞きになりましたように、今日はいろいろな専門の方が、いろいろなトピックスをご披露いただきまして、お聞きの方は多分、重要なテクニカルの問題だったら重要なテクニカルの問題だけでもっと議論してほしいなというご不満をお持ちであろうと推察しますが、そういう事情でご容赦いただきたいというふうに思います。
特に今日のパネルディスカッションで、ディスカッションの成果としておまとめすることはできませんが、各パネラーのプレゼンテーションと、それから今日の貴重なディスカッションに対しまして、最後に拍手をもってお礼を申し上げて、このパネルディスカッションをクローズドしたいと思います。よろしくお願いします。
どうもありがとうございました。


Kansai International Airport Land Development Co.,Ltd